早朝5時半、クチャ駅に降り立つ。
クチャはその昔、亀慈国という小さな王国があったところ。
駅からタクシーに乗り込むと、案の定チャーター観光のお誘いを受けた。
クチャ賓館という宿に到着したところで交渉して、1日半340元(約5000円)で話がまとまった。
クチャ観光1日目
ということで、昼からはタクシーで観光に出発!
まず訪れたのは塩水渓谷。
岩がゴロゴロしている道なき道を下ってゆくと、あたり一面斜めに突き刺さった断層が現れた。

茶色一色の奇妙な世界で、西遊記の妖怪がいきなり崖の上から現れても何の不思議もない雰囲気。
さらに下ってゆくと、干からびた塩でできた川の跡が残っていた。白く光る川筋を舐めてみると確かにしょっぱい。
その昔はこの川沿いがシルクロードの本道で、三蔵法師も通ったらしい。

周りに人工物は何もなく、ひたすら静寂の世界。三蔵法師の時代から何も変わっていないんじゃないかと思われた。
次は車でかなり走って、天山神秘大渓谷へ。
こちらは赤茶けた岩山が両側に立ち並んでいて、その間のわずかな隙間が遊歩道になっている。
迫ってくる岩壁の迫力がすごい。ダチョウ岩、ペンギン岩などがあり、けっこう楽しめた。

次はキジル千仏洞へ。きれいな青い川沿いの崖の上方に、いくつもの穴が空いていた。

初めに入った第8窟が一番の目玉だったようで、薄緑と青と紺色の仏画がとてもきれい。
琵琶を持った飛天も描かれていて、この琵琶の形が奈良の正倉院に残る国宝の琵琶とまったく同じなのだ。
こんな西の果てから日本まで、人やラクダの力だけで文化が伝わっていったなんて、シルクロードが結ぶはるかな距離をあらためて感じた。
クチャ観光2日目
朝、ゆっくり起きだして、宿の近くのウイグル小市場へでかけた。

大きなかまどの中で、直径50センチほどの大きなナンを焼いている。
ナンといっても、インドのフワフワモチモチしたのではなく、ウイグルのナンはピザベースのような平べったい円形をした、イーストなしのズッシリ系のパン。
生地を伸ばしたり模様をつけたりするのは女の人たちで、かまど係は男の人。
この人、頭ごとかまどのなかに突っ込んでナンの出し入れをしているのがすごかった。

またもやおわん入りヨーグルトの店があった。
地元の人は、ビニール袋にガサッと入れてもらってお持ち帰り。私たちは立ち食い。
腹ごしらえも済んだところで、クチャ郊外の観光へ再出発!
まずは1世紀ごろの街の遺跡、スバシ故城へ。
大きな川床をはさんで東と西に遺跡群が残っている。

分厚い壁の建物や、川に向かって大きく開かれた出入り口があり、当時はすごく立派な街だったんだろうと思われた。
次はクズルガハ烽火台へ。
これも漢の時代に使われたのろし台。
土を固めただけでとてももろそうなのに、どうやって2千年間も風に耐えてきたのだろうか。

卑弥呼の時代よりも昔のものがこうやって現在まで残っているのは、本当にすごいと思う。
街に戻ってからは、イスラム寺院のクチャ大寺へ。
お寺への道はいかにものどかな田舎の住宅街で、昼休みの子供たちがぞろぞろ歩いていた。

お寺のおじいさんは片言の日本語でにこやかに案内してくれた。
モスクの中は、天井や窓の透かし模様から差し込む光がとても清々しい。

夜、クチャの街を少しウロウロ。
トルファンと比べるとクチャはとても田舎だ。
ハードスケジュールのクチャ観光を終えて、ぐっすり眠りについたのだった。