シルクロード旅日記 ⑤桑吉おじさんの車で蘭州へ

早朝5時、昨日知り合ったチベット系のおじさんとの約束の時間。

真っ暗な中、宿の前で彼の車を待った。

標高が高いので寒さがこたえる。

それでもラブラン寺の周りのマニ車(なんと一周3.5km、ずっとマニ車の列が続いている)を回しに、信心深いチベット族がぞくぞくとやってきて、キーキー、カタカタという音が絶えず響いていた。

Prayer wheels 2010” by Steven Marshall / Cardboardbird is licensed under CC BY-SA 3.0

蘭州へ

うー寒さむ、と思いながら1時間近く待ってようやく桑吉おじさんの車が現れた。

昨夜の不安もどこへやら、彼がやっと現れたのが嬉しくて、いそいそと車に乗り込む。

それにちょうど彼の知り合いが通りがかり、地元に知り合いもいるんだし、悪人ではないという方に賭けることにした。

さぁ出発!蘭州まで260kmの道のりだ。

桑吉は「ごめんごめん、寝坊しちゃって・・」と言っているよう。

昨日は筆談でなんとか意思疎通できたけど、運転中の人と筆談するわけにいかず、かなり話題が限られた。

始めは乗せてもらっているんだから何か楽しい雰囲気をつくらないと、と頭を悩ませたけど、その内に沈黙にも慣れて景色を楽しむことにした。

道の両脇にはポプラ並木、その向こうには菜の花畑やうす緑の段々畑が広がり、羊を連れた人が行き交い、おとぎの世界のようだった。

Yongchang, Jinchang, Gansu, China – panoramio (17)” by Matthew Summerton is licensed under CC BY-SA 3.0

臨夏で休憩、が・・

途中の街、臨夏で商談があるという桑吉と一旦別れた。

牛肉麺を食べて約束の時間に待ち合わせ場所に戻ったが、桑吉はなかなか現れない。 まぁ仕事だし、遅れることもあるだろうと気長に待つことに。

けれどそれから1時間たっても現れず、これは困ったことになったと思い始めた。

蘭州へはバスでも行けるけど、問題はロックされた車の中にある私のザック。

このまま桑吉が現れなかったらどうしよう。公安(中国の警察)を呼んで鍵をこじ開けてもらおうか。まさか、私のザックが欲しくて、騙してここまで連れてきたわけじゃないよなぁ。

5827-Linxia-City-Qianheyan-Dong-Lu-shops” by Vmenkov is licensed under CC BY-SA 3.0

そのうち近くの商店のおじさん達が、ウロウロしている私を怪しく思って話しかけてきた。大体の事情は分かってくれたようで、まぁまぁ座ってと椅子を勧められて、珍しげに周りを囲まれた。

多分旧日本軍の出てくるテレビドラマで覚えたんだろう「メシ、メシ!」とか「バカヤロー」、はたまた「I love you」とか言っては笑っている。もちろん悪気はないようだ。しばらくブロークン中国語でおしゃべりして気を紛らわせることができた。

桑吉は2時間近くたってようやく戻ってきた。またもや笑って「ごめんごめん」。

それまでおしゃべりしてた商店のおじさんは、最後に不器用な投げキスをしてくれた。

気を取り直して蘭州へ

車に乗り込んで蘭州へ出発!

よく話を聞いてみると、桑吉は本当は蘭州には用事はないんだけど、私のために送ってくれるんだって。

始めは悪いし、そこまでしてもらう理由はないと思っていたんだけど、これだけ待たされたんだからもういい。行ってもらいましょう!

車は順調に走り出したが、桑吉の昼食のためまた休憩。

そのあとは高速道路に入って快適ドライブ。ただ、高速の出口では公安の検問に出くわした。

私も質問されたけど、答える前に桑吉が答えた。日本人だとバレるとまずかったようで、私は蘭州に住んでいる友人だということになったようだ。

自分でひと言も答えないヤツなんて怪しいと思うけど、公安は信じてくれたようで無事通過。

14時半、ようやく蘭州市街に到着。

適当なところで降ろしてもらい、握手をして別れた。

ボキャブラリーが貧しいために「謝謝(シェシェ)」としか言えない自分がもどかしかった。本当はもっといろいろな気持ちを伝えたかったのにな。

待ちぼうけを喰わされっぱなしの桑吉おじさんだったが、元はといえばちょっとした好奇心と親切心から私をここまで送り届けてくれたんだろう。ポッと出会った他人にここまでしてくれる人もなかなかいないよなぁ。

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